移植拠点病院としての取り組み

造血幹細胞移植拠点病院とは

造血幹細胞移植拠点病院とは、造血幹細胞移植を円滑に行うための「人材育成」および「地域連携」の中心的な役割を果たす病院のことを指します。

血液疾患(白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫など)に対して、年齢や病状に応じて造血幹細胞移植が選択されますが、北海道の中でも中核都市に住んでいる方と地方都市にお住まいの方で受けられる移植医療が異なることは望ましくありません。そこで、①移植医療の質の向上、②移植医療に関わる医療人の育成、③スムースな移植医療の提供(幹細胞採取の迅速化など)、④どこに住んでいても適切な移植が受けられるような医療体制の構築が求められています。これらの目標を北海道エリアで達成するために、2015年8月に北海道大学病院は厳しい条件をクリアして造血幹細胞移植拠点病院に選定されました。

移植医療における北海道の現状および問題点

北海道は国土の約20%を占め、その広大な土地におよそ540万人の人々が暮らしています。全道各地から血液疾患を患った方々が血液専門医のいる道内中核都市に通院されていますが、病気の種類や状態によっては造血幹細胞移植治療が必要となる場合があります。しかしながら、造血幹細胞移植が可能な施設は、札幌・旭川・函館の3都市に限られており、これら3都市以外にお住まいで造血幹細胞移植治療が必要とされる方々に対しても、適切な時期に、適切な医療が実施できるようにするネットワーク体制(医療連携)の構築が急務となっています。また、造血幹細胞移植後のフォローアップのために、遠方から何時間もかけてこれら3都市にある病院まで通院される方も珍しくなく、地元の病院で移植後患者様のフォローアップが可能な体制の構築も必要となっています。

北海道大学病院が目指す移植拠点病院としての方向性

各病院間の連携(ネットワーク)をより強固にすることで、移植施設で移植が行われた患者様が他の病院で引き続きフォローされる場合でもスムースに移行できる体制の構築を目指します。また、移植を実施していない病院でも移植後の患者様のフォローアップが可能になるよう、セミナーや出張研修を通じて人材育成にも取り組んでいきます。さらに、よりスムースな造血幹細胞移植を目指して、できるだけ多くの幹細胞採取に取り組んでいきます。そして、移植後長期にわたって高いquality of life (QOL:生活の質)が保てるような長期フォローアップ(LTFU)体制の構築にも取り組んでいきます。すでに北大病院においてはLTFU外来がLTFU認定看護師により行われており、移植片対宿主病(GVHD)症状などの合併症の状況確認・早期対応だけでなく、生活相談や社会復帰に向けての準備相談、不安な気持ちに対する相談にも対応し、状況に応じて薬剤師や栄養士の介入依頼などを行っています。

さらに、北大病院内における診療実績向上に対する取り組みとして、最適なチーム医療体制の構築にも力を入れています。毎週、チーム合同カンファレンスを行うことで常に情報を共有し、また、移植前処置開始前までに造血幹細胞移植チームとして歯科・リハビリ・栄養士・薬剤師・看護師・医師など多職種が集り、一人一人の患者様の病状や問題点について検討する移植前カンファレンスを行うことで、質の高い個別化医療の提供を心掛けています。

北海道大学病院における移植実施件数

下記に、当院における成人および小児をあわせた移植件数を示します。少子高齢化に伴い、ドナー確保が難しくなっている中で、標準的なHLA合致ドナーからの骨髄・末梢血幹細胞移植に加えて、血縁者間HLA半合致移植(臨床研究として実施)や臍帯血移植の実施により、ドナーの選択肢を大幅に拡大し、迅速かつタイムリーな移植を提供できるようにしています。

当院における幹細胞採取実績

当院では、週1日午前中の手術室の枠を骨髄採取のために利用できるため、遅滞なく血縁・非血縁ドナーからの骨髄採取を実施可能です。また、輸血認定医4名の内、輸血部に2名が専従となっているため、輸血・検査技師、看護師、医師の連携により、末梢血幹細胞やドナーリンパ球、顆粒球などの採取が常時可能となっています。さらに、細胞プロセッシング室を有していることから、厳密な無菌処理が可能となっています。